シングルマザーの相続対策の質問をいただきました。
調べてみると、相続対策云々より、シングルマザーの場合は遺言で後見人を指定しておくことのほうが重要!
税金うんぬんより、元夫に好き勝手されないように対策すべきだという結論です。
※この内容は、子どもが未成年の場合の対策です。
シングルマザーの相続対策についての質問
同じシングルマザーの方から相続対策はしているか?とご質問をいただきました。
ゼニー簿はまだ40代で元気です。
自分が死ぬことを想像してませんし、実際の確率的にも子どもが未成年の間に死ぬことはないと思っています。
もし病気になったとしても、すぐに死ぬことはないだろうから、病気が発見されてから準備すればいいと軽く考えていました。
そうです。
全く考えていませんでしたー!(笑
ただ「もしも」は確率の問題ではなく、ある日突然やってくるかもしれません。
病気なら準備できても、事故なら突然ですから。
ということで、子どもが未成年の間にシングルマザーが死亡する場合の相続対策を調べてみました。
子どもが未成年の場合は自分で相続できない
未成年者は法律行為ができないことになっています。
相続は法定行為ですから、自分ではできないわけです。
それに、両親が揃っていた家庭で母親が亡くなったとしても、父親が子供の代わりに法定行為ができるわけではありません。(父親自身も相続人で、互いの利益が相反するので)
こどもの代わりに法定行為を行う「特別代理人」をたてることになります。
それでも、まともな家庭なら生きている方の親が子どもに不利になるような「特別代理人」をたてることはまずありませんよね。
当たり障りのない親族に「特別代理人」をやってもらって手続きを進めて終了でしょう。
ただ、母子家庭の場合は母親が死ねば、少し様子が違ってきます。
シングルマザーの死亡後、親権者は誰?
親権者であるシングルマザーが死亡した場合、相続人は子どもです。
ただ、未成年者は法律行為ができません。(←ここまでは一緒)
相続手続きを代わりに行う「代理人」を指定することになりますが、代理人を誰が指定するのでしょうか。
子どもの代わりに判断する親権者の「母親」が死んでしまったのですから、新しい親権者が必要になってきます。
親権者の資格があるといえば・・・・一応親ですから思い出したくもない元夫が候補になるわけです。
ぎゃー!
もちろん、親権は常に子どもの健全な成長のために行使されるべきで、離婚時に親権を取得していた者が亡くなっても、もう一方が上記の条件を満たしているとは限りません。
だから、当たり前のように親権者になれるわけではないのですが、その判断は裁判所に委ねられてしまいます。
万が一にも、裁判所が親権者(未成年後見人)として元夫を認めた場合どうなるでしょうか。
子どもたちは元夫と暮らさなければならないばかりか、相続したお金だって元夫の思いのままになるのです。
だって、相続するのはあくまで子どもですが、結局その子供の新しい親権者である元夫が管理するわけで、遺産を自由に使うことができるようになるわけです。
(※未成年後見人が不正や不当なことをしたときは解任されたり損害賠償を請求されたり刑罰を受け たりすることもあるそうですが、解任は容易ではないようです)
ぎゃーーーーー!!
ゼニー簿の1億円がーーーーーーーー!!!
まだ、税金で全部持っていかれる方がマシなレベルです。
地獄です。
死んでも死にきれません。
シングルマザーは遺言で後見人を指定すべし
そんな地獄のような自体を防ぐには、どうするべきか。
シングルマザーは遺言で「未成年後見人」を指定しておけばいいんです。
未成年者に対し最後に親権を行使する者(=シングルマザー)は、遺言で後見人を指定できます(民法839条1項)。
これを指定後見人といい、家庭裁判所の審判は必要ありません。
指定後見人は、遺言の効力発生時に自動的に「未成年後見人」になれ、法定代理人として未成年者の財産につき処分権限があります。
ということは、遺言で「未成年後見人」を指定しておけば、相続手続きも代理できて、その人に子供の面倒を見てもらえるわけです。
※ただし、指定後見人は、遺言の効力発生時から10日以内に、区役所あるいは市町村役場に、後見開始の届出をする必要があります(戸籍法81条)。
死後に自分の資産を元夫に好き勝手にされないようにするには、自分の信頼できる人に「未成年後見人」になってもらうしかないということです。
ところで、相続税は?
質問者さんの相続対策の質問は、あくまで「相続税」に対することだったんじゃないでしょうか。
ゼニー簿の「遺言で未成年後見人を指定しておけ」という斜め上からの回答でびっくりしているかもしれません。(苦笑
ただ、相続税を気にして、今から税金のかからない範囲で子どもに贈与するのはちょっと違うかなーと思います。
子どもは最長でも20年で法律上大人になります。
でも、親のほうが40代50代なら普通はあと40年、50年生きなければなりません。
子どもは大人になれば自分で稼いでいけますが、親の方は逆に働けなくなります。
万が一の相続税対策より、自分の老後の生活費を第一に考えるべきです。
相続税が怖いからといって、教育資金の一括贈与で1,500万円(非課税最大額)を娘二人に渡したら、自分の老後資金は一気に減ります。
相続税が怖いからといって、贈与税がかからない年間110万を毎年渡し続ければ、自分の老後資金は一気に減ります。
自分の老後資金を減らしてまで、相続税対策するのは自分が70代80代になってからで十分ではないでしょうか。
(かなりの資産家家系の人なら、早めに考えてもいいでしょうけど)
要はリスク管理の問題です。
子どもが未成年のうちに死んでしまう確率と、相続税対策で自分の老後資金が枯渇してしまう(自分が長生きする)確率、どちらが高いのか。
ゼニー簿は後者のほうが確率が高いと考えます。
いや、実際問題として親が40代50代で死ぬ確率は限りなく低いです。
それに、子どもにはゼニー簿の資産を当てにせずに自分で生きてほしい。
子どもがまだ働く経験もないうちから過剰なお金を渡すことの危険性のほうが、怖いです。
ゼニー簿が現状で相続対策をやるなら
40代で資産が1億円あるシングルマザーのゼニー簿が、現状で(子どもが成人になるまで)相続対策をやるなら下記のようになるでしょうか。
- 遺言で「未成年後見人」を妹に指定しておく
- 遺言で相続人に妹を入れる
(子どもを育ててもらう対価として。
ただし、相続人に入れると利益相反になるので、遺産相続の際には特別代理人が必要になります) - 妹との関係をよくしておく
- ジュニアNISA(2023年廃止)で運用する
ジュニアNISAは2023年廃止ですが、今からでも年間80万☓3年=240万は非課税で運用できます。
(※子供が成人するまでジュニアNISA口座で運用し、そのまま一般NISAへ引き継ぎできます)
240万を5%で運用できれば、20年で650万、30年で1千万です。
子どもに残すお金はこれぐらいで十分なのではないでしょうか。
ゼニー簿は自分の資産は自分のために使って死にたいと思っています。
子どもに残したいという希望は全く無いし、万が一の資産を残したまま死んでしまっても、死んだあとのことはどうでもいいです。(笑
相続税を払うのはゼニー簿ではなく、子どもたち。
どうでもいいです。(←何度でも言う
相続できるお金があっただけでもありがたいと思え!と思います。
自分のお金をどう使いたいかは人それぞれの価値観で違いまよね。
自分より子どもが最優先と思う方は、今から相続対策で毎年非課税範囲の110万を渡して運用しつづければいいと思います。
ちなみに相続税がかからない範囲は、3,000万円+相続人の数×600万円です。
この金額を残して、毎年非課税の枠で贈与し続けるしかないです。
(※もちろん、相続税対策として会社設立と方法もありますが、特殊なので除外します)
シングルマザーができる相続対策は?
相続税を気にするまでの資産がない場合は、未成年の子供のために何をしておくべきか。
元夫が「未成年後見人」になっても構わない、誰がなっても構わないような人は特に何もする必要はありません。
しかし、特定の人に「未成年後見人」なってほしいという要望があるなら、やはり遺言で「未成年後見人」を指定してしておくべきでしょう。
「残せる財産も何もないのに、子供の面倒をおしつけていいのか?」と思われるかもしれませんが、子どもには遺族年金が支払われるので、子供の生活費で迷惑をかけることはありません。
(※ただし、元夫が「未成年後見人」になる場合は遺族年金は支給されません)
ただ、大学進学などお金がかかることが分かっているなら、遺産として子供の教育費ぐらいは残してあげましょう。
そして何より、あなた自身が子どもが成人するまでは元気でいるために、よく寝て、よく食べて、よく運動してください。
あくまで万が一の話ですから。